ある日、冠動脈バイパスと僧帽弁置換術がありました。僕が内胸動脈を取ってると暇になったのかTSUSHIMAくんが色々と喋っていました。新しい企画や今後作り始める動画について。僕はあんまり考えて話しながら手術するのが得意ではないので、「あーあー、そうね、うん」といわゆる生返事の連続をしていたので、周りの人達は今日のヤス(と呼ばれている)は一人でよく喋ってるわね、と思っていたと思います。大腿動脈からイン…
ある日、LVAD手術がありました。体の小さい人で(アメリカではレア)、HVADを植込みました。補助人工心臓と大動脈をつなぐ人工血管の吻合ですが、いつも長さの調整に四苦八苦します。太田先生(上司)が「毎回かならず長すぎるか短すぎるかにしかならない、ベストであったことがない」スモールジョークを交えジョンS(PA)とアイリーン(オペナース)の笑いを誘っていました。今日のは吻合中は「短っ」と思って早速後悔…
ある日、普通の冠動脈バイパス術がありました。普通に胸を開けて、普通にバイパスをして、普通に胸を締めました。でも今日は、いつもと何かが違うことに気づきました。もうそこに、TSUSHIMA君はいませんでした。 あと、大事なことなんですが、無事に手術も終わり自分の中ではまずまずの出来だったな、と思っていたところ、その日の帰り道に太田先生(上司)から 「今日の手術、もっと速くや…
ある日輸血を使っちゃいけない人の冠動脈バイパス術がありました。チーフのとこにこういう人達が集まってくるので、移植とかLVADとか解離とか、輸血なしで挑んでてほんとすごいなと思います。輸血使わない症例の時はチーフは胸開けるところからいるのですが、その日はなぜか姿をくらましていました。時間も勿体無いので胸開けてみたりしてみたんですが、遅れて手術室に入ってきたチーフが「なんで始めてるんだよ」と上島竜兵ば…
ある日、冠動脈バイパスをする手術がありました。心臓手術ではほぼ毎回ヘパリンを使用します。その日もいいタイミングのところで麻酔科に「ヘパリン プリーズ」と言いましたが、「え、なんて?」と言われました。その後も 「だから、ヘパリン プリーズ ヘパリン」 「え、何?」 「ヘパリンだよ」 「ソーリー ヒロ、なんて言ってるかわかんないわ(申し訳なさそう)」 「ヘパリン プリーズ ヘパリン プリーズ ヘパリン…
ある日、バイパス、大動脈弁置換術後の再大動脈弁置換、大動脈置換をする手術がありました。チーフとの3週間ぶりくらいの手術でしたが、なぜかその日はご機嫌で「これはこういう風にするんだぜ」とか、「ヒロ、この前はありがとな」とか、なんか優しめでした。僕は人の優しさは基本的に疑ってかかる体質であるため、逆に不安な気持ちでいっぱいでした。その後、タオルクリップで人工心肺のチューブに穴があいたり、途中で「ちょっ…
補助人工心臓ハートメイト3植え込みの手術でした。ハートメイト3ってなんか名前がかっこいいですね。オペの終盤、ショーン(オペナース)がアグネス(オペナース)に器械出しを変わる時、いつもは「アグネス イズ ヒアー、サンキュー」とか言うのですが、今日は「ただ〜」といってアグネスの方に向かって手をひらひらしてました。ここで言う“ただ〜”とは日本でいうところの“ジャジャーン”と一緒です。アメリカではただ〜と…
ある日の夜中、日中にラザ(胸部外科レジデント的な人)がオペした人が再開胸になったよー、というグループメールに起こされました。大変やね、ガンバ、ラザ。と心の中で小さく応援しながら二度寝に入ると、ラザから「ちょっと手伝いに来てくれない?」というメールが直接来ました。物凄く行きたくなかったですが、しょうがないので手伝いに行きました。 ラザは先週に引き続き2回目の再開胸止血症例であったため、本人はさぞ凹ん…
ある日、感染した大動脈弁を新しいのに取り替える手術がありました。東京大学から来たTSUSHIMA君が初めて手洗いしたのですが、手術ガウンを着る際になんか間違えたみたいでやり直しをしていました。オペナース達はなんだか楽しそうに手術ガウンを着なおすTSUSHIMAくんの周りを囲んでワイワイしていました。僕が研修医1年目の時、手術グローブを間違えて不潔にしてしまったところ、オペナースからこれでもかという…
ある日、ニューパルスという鎖骨下動脈からバルーンを入れて、そのまま体の中に埋め込んじゃって心臓をサポートする、LVAD的なノリの手術をしました。このニューパルス、シカゴ大学で生まれた(チーフが作った)のですが、アメリカ発のデバイスがFDAにより認可されたのは数十年ぶりのことらしく、すごいことだと毎回チーフは言っています。細かい、非常に細かいtipsはありますが、基本的には鎖骨下動脈から管を入れるだ…